なぜ山岳遭難してしまうのか?
実は「山岳遭難の大半はベテランが起こしている」というデータがあります。
まず始めに山岳遭難の現状について復習しておこうと思います。
図1は2018年までの山岳遭難の統計ですが、遭難件数は年々増加しています。
これは登山者人口の増加による影響もありますが、携帯電話の普及によって救助要請しやすい環境になっていることも関係していると思います。
図2は年代別の山岳遭難数です。
近年の傾向として明らかに60歳〜70歳代の遭難件数が多いことがわかります。
これらの年代は登山者数としても多いことが一因ではありますが、以下の要因も大きいと考えています。
①高血圧、糖尿病などの持病を持っている
②体力が低下している
①心筋梗塞や心房細動などの心疾患の危険因子です。
後日、お話ししますが山中で心筋梗塞を発症することはめずらしいことではありません。
そのような場合には救命は非常に困難です。
②どのような屈強な方でも年齢とともに体力は低下します。
特に日常的に登山をしている方ほど自分の体力に自信があるため、過大評価してしまう傾向にあります。
図3は2014年夏山シーズンの長野県内での山岳遭難事故を調査したものです。
「山岳遭難は登山歴10年以上のベテランが多い」ことがわかります。
「ネットの情報だけで無謀な登山をする若者」も事故を起こすことはありますが、実は少数派なのです。
なぜなら若いというだけで体力が全く違います。
「登山歴10年以上のベテラン」が遭難してしまう理由として、相対的な体力不足が挙げられます。
ベテラン登山者はトレーニングをしている方が多いのですが、
それにも増して加齢に伴う体力低下が大きく、登山に必要な体力の客観的評価ができていないのです。