山岳遭難死亡の約20%は心臓突然死
登山における3大死因
登山における3大死因は、
①外傷
②寒冷障害(低体温症・雪崩埋没)、
③心臓突然死
と言われています。
実に山岳遭難死亡の約20%は心臓突然死とされています。
登山中に滑落外傷や低体温で死ぬ可能性は想定していても、心臓突然死を想定している登山者は少ないのではないでしょうか?
しかも、薬科無いことに山で突然死された方の多くは心臓病の既往歴はありません。
つまり、自覚症状がない「隠れ心臓病」なのです。
登山中の突然死の原因 〜急性心筋梗塞とは?〜
登山中の突然死で一番多い原因は、急性心筋梗塞です。
心臓の筋肉に栄養を補給している冠動脈と呼ばれる血管が閉塞することで、心筋壊死を起こす病気です。
また、多くの方が誤解されていますが、心筋梗塞の大半は「前兆がありません」。
これが山で心臓突然死をきたす方が心臓病の既往歴がないことの一因です。
山岳遭難死の特徴
山での心臓突然死は、
「登山初日の昼前の登りが多い」
「空腹時間や脱水時間が長いと多い」
などの特徴があります。
これらはいずれも交感神経活性(体の緊張)が高まっている事と関連します。
交感神経活性が高まると、血圧上昇や心拍数の上昇が起こりやすく、もともと冠動脈にプラーク(動脈硬化)があると、血管壁にシェアストレスがかかり、プラークが破綻するのです(ニキビが破れるイメージ)。
すると、血管内に血栓がわいて、突然血管が閉塞することで、心筋梗塞を発症します(下図)。
まとめ
以上をまとめると、
・山岳遭難死のおよそ20%は心臓突然死であり、その多くは心筋梗塞
・登山中の過剰な交感神経活性が心筋梗塞の発症に関与する
ということになります。
登山中の心臓突然死を予防する方法は2つ考えられます。
① 事前に検診をきちんと受けて病気の有無を把握、管理すること
②「過剰な交感神経活性緊張」を起こさないように登山すること
です。
②についてはいずれ改めてお話しします。
ちなみに、山岳遭難死(突然死に限らず)の95.5%は40歳以上が起こしています。
20代、30代の方は山ではめったに死にません。
40代以上の方は、ぜひ年に1回ぐらいは検診を受けて下さい。
その際には「運動負荷検査」「心臓超音波検査」が項目に入っているものをお勧めします。